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遺産分割の種類と注意点について
遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合う手続きです。
被相続人の遺産は相続開始後に相続人全員の共有となり、共有状態の遺産の分け方を話し合うのが遺産分割協議です。
遺言書があれば、原則として遺言書に従い遺産を分割しますが、遺言書がなければ相続人全員が参加して遺産分割協議を行う必要があります。民法上、遺産分割の期限はありませんが、相続税が課税される場合には相続開始から10ヵ月以内が実質的な期限になります。
遺産分割の種類
遺産分割には、1.現物分割、2.換価分割、3.代償分割、4.共有分割の4種類があります。
それぞれ長所・短所がありますので、しっかりと考慮の上、遺産分割協議書を作成する必要があります。
1.現物分割「遺産を現物のまま分割する方法」
〈長所〉遺産をそのまま残せる
〈短所〉法定相続分どおりに分割するのが難しい(不公平になる)
2.換価分割「遺産を売却し金銭で分割する方法」
〈長所〉公平な分割ができる
〈短所〉売却の手間や費用・税金がかかる
3.代償分割「遺産を多く取得した相続人が他の相続人へ金銭等を支払う方法」
〈長所〉遺産をそのまま残せる
〈短所〉他の相続人へ代償金を支払う資金力が必要になる
4.共有分割「共有物のまま共有物の権利を認める方法」
〈長所〉遺産をそのまま残せる
〈短所〉共有物への自由度が低い(相続人全員の合意が必要になる)
遺産分割の注意点
1.相続人の中に行方不明の者がいる場合
相続人となるべき者が行方不明の場合には、家庭裁判所に不在者(行方不明の相続人)の「財産管理人」の選任を請求し、選任された財産管理人と他の共同相続人の間で遺産分割協議をすることができます。
ただし、遺産分割は財産処分の要素があるため、不在者の財産管理人の権限の範囲を超えることになりますから、遺産分割協議の開始および遺産分割の実施について家庭裁判所の許可を受ける必要があります。
2.相続人の中に認知症の者がいる場合
認知症で意思表示ができない相続人も、遺産分割協議から除外することはできません。
この場合には、家庭裁判所に後見開始の審判を申し立て、認知症の相続人に代わって意思表示をする「成年後見人」を選任してもらい、選任された成年後見人と他の共同相続人の間で遺産分割協議をすることになります。
3.相続人の中に未成年者がいる場合
相続人が未成年者の場合、親権者である親が代理して法律行為を行うのが一般的ですが、親も相続人の一人として遺産分割協議に参加する場合には、親子の利害が対立するため、親が子を代理して遺産分割協議をすることはできません。
家庭裁判所に未成年者に代わって意思表示をする「特別代理人」の選任を請求し、選任された特別代理人と他の共同相続人の間で遺産分割協議をすることになります。
4.遺産分割をやり直すと贈与税が課税される
遺産分割のやり直しによって財産を移動する場合、相続ではなく贈与による財産の取得とみなされ、贈与税が課されます。
すでに相続税を納付している場合でも、改めて贈与税が課されることになりますので注意が必要です。
5.遺産分割が決裂した場合
遺産分割協議が決裂した場合は、家庭裁判所の調停や審判によって遺産分割の方法を決めることになります。
遺産分割調停は、調停委員の仲介により、相続人全員が遺産の分け方を話し合う手続きです。
第三者である調停委員が間に入ることで、相続人同士が直接協議するよりも冷静な話し合いが期待できます。
遺産分割調停が不成立となった場合、家庭裁判所が審判によって結論を示します。
まとめ
このように、遺産分割の方法には、それぞれメリット・デメリットがあります。
円満な相続を実現するためにも、遺産分割協議を行う前にSTCへ是非ご相談ください。